shougaの生き方模索雑記

日記、心の安定、長野移住、登山、etc…

好きな漫画:ゴールデンカムイ

 

ゴールデンカムイ

無料公開

累計1600万部を突破した『ゴールデンカムイ』という人気漫画がある。最終章突入を記念して、7月末から9月17日まで全話無料公開されているそうだ。何度か途中まで読んだことはあったものの断片的で、今更追いつくのも大変だろうなと思い読んでなかった。そんな時にこの無料公開キャンペーンがあったのでちょうどよかった。私のような人は多いだろうし、効果は高そうだ。読み始めたところ内容が面白すぎて、ページをめくるのが止まらず1日何十話も読んで数日で最新話まで追いついてしまった。

 

あらすじ

煽り文に「冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・ホラー・ギャグ・ラブ!!」と書いてあるが、まさにその通りな内容だ。明治の北海道を舞台に、隠された莫大な金塊の在処を示した暗号が掘られた囚人達の入れ墨を巡って、多くの登場人物の思惑が交錯する物語。この漫画はすごすぎて何から説明すればいいのか分からない。

戦いによる流血や死、騙し合い等の人間の剥き出しの欲望が常に渦巻いているのに、合間に差し込まれる和気あいあいとしたギャグや北海道の豊かさと文化描写のおかげで作品の雰囲気が重苦しくなっていない。

主人公

この漫画は杉元とアシリパのダブル主人公だ。1人は主に荒事を担当する元陸軍軍人の「不死身の杉元」こと杉元佐一。それと女の子でありながら狩りをする先進的な子で、毒を仕込んだ弓矢でヒグマすら倒せる、自然について大抵のことは知っている真っすぐな心を持つアイヌの少女アシリパ。この2人のバランスが物凄く良い。良すぎる。

杉元は日露戦争帰りということで殺しに慣れているが、アシリパの存在によって杉元は人の心を失わないようになっている。一方でアシリパもとある理由から様々な勢力から狙われるが、低い対人戦闘力を杉元が補っている。だがこの2人は欠点を埋め合うではなく、単なる利害の一致でもなく恋愛関係にもない。その『相棒』としか表現できない信頼関係がとても尊い

 

 

この漫画のすごさ

まず特筆すべきなのは、当時の文化が信じられないほど細かく描写されていること。明治時代の日本の様子というのもそうだが、アイヌの人々の暮らしや文化の綿密な情報が1話1話惜しみなく投入されている。ものすごく丁寧に取材や情報収集にあたったことがすぐに分かる。アイヌの人々がどういう言葉を話しているか、何を大事にしているか、森から何を取ってどんな道具を使っているか、そして開拓による森林資源の減少やアイヌ文化存続等の問題について、また北海道だけでなく樺太アイヌやロシアの極東民族の文化についても丁寧に描かれている。

次にすごいのが画力。1話の時点ですごいが、話が進むにつれてもう収集が付かない程になってしまった。北海道のどこまでも雄大な景色、生きているような動物達、ヒグマの恐ろしさ、建物の重厚感、銃の緻密さ、動きが分かりやすく迫力のありバリエーションに富んだ戦闘シーン…。要するに全部がすごい。

 

次に登場人物。1人1人の個性がよく立っていて見た目も分かりやすい。そして内面も深く、「このキャラならこういう風に考えて行動するだろうな」と納得しながら読めるほど、登場人物達がまるで生きているように描かれている。

話の進め方や伏線も見事。これだけ多くの要素と人物を動かしているのに破綻せず完全にコントロールできている作者に対して恐ろしさすら感じる。「あのキャラのちょっとした行動であれがこうなってその影響でああなって…」と絡み合っている。誰が何を把握していてどう動くか、私なら絶対に管理しきれない。人物達は一枚岩というわけでなく、合流しては分離し、協力しては裏切る。その中にお涙頂戴的な死は存在しない一方で、名有りキャラが完全に無駄な死を遂げることも無く、必ずその死に意味がある。「このキャラはとりあえず生かしといて邪魔になったら雑に処理しよう」という適当さが微塵もない。生きているということはまだ役目が残っている、という作中の台詞の通りだ。

行動の動機や目的も良い。登場人物が何のためにそういう行動をするのか・目標は何なのか、というのを定期的に描写してくれる。読者として「こいつ何のためにここまで付いてきてるんだっけ?」と疑問を抱くことが無かったし、「もうそれで十分だしそんなに頑張る必要なくない?」と思ったところで作中でも同じ内容が突っ込まれる。なので、物語の歪みを修正する都合でいきなりキャラが突拍子も無いことを言いだすような事態になることが無い。

 

 

 

tonarinoyj.jp

1話

この漫画の1話は杉元という人物の紹介から、金塊の話、杉元とアシリパが出会いヒグマを倒すことを決める、というあまりにも完璧な導入の1話だと思う。

謎を解明し金塊を手に入れるという最終的な目標、暗号の入れ墨を集めるという中期目標、そしてヒグマを倒してこの場を生きて切り抜けるという目下の課題。これら全ての情報が読者に提供されている。

 

感想

今回全て読ませてもらうまで、ここまで素晴らしい漫画だということを知らなかった。こんなに良い漫画が正しく評価されて大人気になっていることを素直に嬉しく思う。完結したら全巻揃えたくなった。

私は『大神』というゲームでアイヌについてほんの少し知った。カムイ、ウエペケレ、コタン、ピリカという単語を知ったくらいだが、以前よりもアイヌに対して親しみを覚えた。その一方でアイヌ文化が衰退していったことを残念に思う気持ちもあった。でもゴールデンカムイが多くの人に読まれたことでアイヌ知名度が上がったのは確かだ。それが嬉しい。

まだ何かこの漫画の良いところを文章に書ききれていない気がする。そのくらい奥が深い内容だ。